ノイズだらけの海を歩こう:2020年3月から7月の音楽の話(③)

ノイズとはなにか、という問いは、常に面白い。なぜなら、答えはいくつもあるのに、どれが正しい正解であるのかはわからないという類の問いだからだ。 これは、とりあえず辞書を引いてみればわかる。まず出てくるのは音の事柄(雑音)であるが、続けて多領域…

不完全な天使たちはいつも遅刻してやってくる:2020年3月4月の音楽の話②

インターネット・アートの代表的な作品の一つに、マイケル・ウルフ(Michael Wolf)の『A Series of Unfortunate Events』(不幸な出来事シリーズ、2010年)』というものがある。グーグル・ストリートビューのなかに映り込んだ、さまざまな不思議な場面(複…

日常はゆっくりと動きを止めようとしていた:2020年3月4月の音楽の話

いま思うと、いつも空ばかり見ていた。 といっても、感傷的な心象ではない。具体的に、煙草を吸うために窓を開けて煙をふかしながら、ベランダ越しに見える空を見る時間が多くなったということだ。2020年3月と4月の風景は、そうして見た空ばかりだった。 日…

即興と作曲、歌と詩と電子の2020年代

ドラクスラー・オクテットのアルバムGLEDALECのジャケット どうも、とうとう緊急事態宣言の中で、本格的な自粛期間に入ってしまいました。ほとんど外出もせず、もっぱらリモートでの日々です。そんなさなか、外にでたり遊びに行きたいという時間を使って、欧…

19世紀の遺産

コモンウェルス加盟国の地図。ウィキメディアコモンズから さいきんのUKの文化動向を見ていると、いわゆるブラックというか黒人を主題にしたものが増えてきているように思います。ロンドンを中心に、イギリスはある程度の多文化社会を作り上げているように思…

プログラム・即興・言語 ライブ・コーディングの愉しみ

最近つくったアルバム。BPM380や550といった値を用いています 4月末から、ライブ・コーディングという方法を使って、音楽を作り始めました。そのことを書こうかなと思います。 きっかけは、前に書いた[ _ _ _ ]のライブを見たことですね。彼らはスーパーコ…

デジタル世界で距離をこえて共有すること [___]について

ライブ画面。縦横3列ずつ、9つのコーディングが並行して行われる。画面はさらにそのスクリーンを、サンダーソンのいるギャラリー壁面に投影した映像が流された 先日、[___]というイベントを見ました。オンライン、フェイスブックのライブ上で、主催は香港…

2020年ベスト5音楽編

Afterlife では、2020年のベスト5です。私的な基準で。 1 unsound festival 2020 afterlife /11.10.2020 https://www.facebook.com/unsoundfestival/videos/359073675240995 オンラインフェスティバル。今年に入ってからCGだけの空間を作り始めた、台北のn…

ネット上の、一つの場所 《カルテッツ・オンライン》(その2)

《カルテッツ・オンライン》については、少し前に、簡単な感想を書いてみました。今回はその続きです。 それで、久しぶりにそのページを開いてみたのですが、実は演奏しているところから、下にスライドできるんですね。そうすると、いろいろな情報と、あたら…

テレコミュニケーションの中の身体、路上から 『On Our(My) Way』

『On My Way』中継風景。定点カメラだけでなく、それぞれの携帯やPCからの視点が交錯する。中段左端に、主催の一人、磯村暖さん 昨日、オンラインで、花崎草さんのパフォーマンスを見ました。場所は、UGO(うごう・烏合)という、新大久保に新しくできたオー…

影たちの即興 - カルテッツ・オンライン

大友良英さんとYCAMで共同制作された「quartets online」を聴いています。現在、インターネット上で公開中。大友さんと7人の音楽家が、ネット内で即興演奏を繰り広げているところです。 それで、これは一年間つづくということで、感想というのはまた書くか…

テレパスとSyrpheとベイルートのこと。

少し前ですが、新曲が出たので、備忘録を兼ねて。 ドイツ在住のセドリック・フォーモントが運営しているレーベルSyrpheから、4枚組のアルバムが出ました。タイトルは「Retrieving Beirut」。少し前ですがベイルートで起きた大規模な爆発事故のケアのための…

遅延する世界でゲームをする:自作解説

唐突ですが、『マトリックス』という映画はご存知でしょうか。たぶんご存知だと思いますが、主人公たちが仮想空間の中に入り込んで戦ったり生き返ったりする映画でした。3部作ですね。 その中で、印象的なシーンはどこか、というと、アクションシーンだと思…

リモートの祝祭 コロナ・インプロ・セッションズ

9月のアルスエレクトロニカ・フェスのためのリハーサル風景。リモートでおこなわれている はい、また少し更新がおそくなりました。今回は、いわゆるリモートでのインプロヴィゼーションについて書いてみようと思います。対象は、ズバリ「コロナ・インプロ・…

遠い音楽

こんにちは。たまには、最近つくっている音楽について、書いてみようと思ったので、書いています。前回の、ハンブルクを拠点にしたリモートコンサート企画「パジャマオペラ」から派生して、これまで4つほど作品の形をしたのがありますので、ちょっとまとめ…

ネットワーキング・プロジェクト「パジャマオペラ」

パジャマオペラ、ライブストリーミングの様子。ここでは、設定(作曲)されたルール上で、即興演奏をおこなっている ひさしぶりになりました。その間に、自粛期間とかあってですね、その期間のことを書こうかな、と。 最近は、ドイツ、ハンブルクの音楽家を…

閉ざされたいくつもの部屋から

新型コロナウイルスで、欧州とアメリカの各都市がロックダウンされ、音楽家も外に出ることができなくなった。その中で、しかし、やみくもな創作意欲をもてあました音楽家たちは作品を作り続け、発表し続けている。とくに今は、この10年で発達した動画サイ…

躍動する東京の電子雑音2020

今回は、最近の日本のシーンで面白そうと思う映像を紹介してみたいと思います。まず、ちょっとだけ前提が必要なので、こちらをご覧ください 野本直輝さんという方のライブの映像ですが、これはライブ・コーディング(コードは、コンピュータでデータを表現す…

ノイズあるいは聲音in台湾

台湾ノイズ動画を紹介したつづきで、もうちょっと行ってみましょう。台湾では「聲音」という単語を使うのですが、これでノイズからサウンドまで、かなり幅広い意味で用いられます。直訳すると音や声も意味するらしく、かなり幅広い。そして、その聲音の芸術…

雑音フロム台北

新型コロナウイルスのせいで、3月頭に行く予定だった台湾旅行を見送ることになってしまいました。残念。 だからというわけではありませんが、台湾のノイズ動画をいくつか紹介してみたいと思います。台北のノイズシーンは、日本や、これまで紹介してみたアジ…

亜熱帯でノイズ(ノイズ・フロム・インドネシア)

亜熱帯、東南アジアから、この数年、話題のノイズが相次いでいます。インドネシアで盛んなメタルから発展した、うるさい、やばい、こわい、てんこ盛りのノイズの世界が広がっています。個人的にも楽しんでいるところなので、ちょっと紹介してみましょう。 ま…

ノイズ fromチャイナ

突然ですが、中国のノイズの動画を紹介してみたいと思います。ノイズというと、日本、欧州、アメリカなどかと思いきや、中国でもしっかりしたシーンがあり、また個性的な演奏家たちがたくさんいるんですね。恐竜のように巨大なイメージを音で作り出す人から…

正義の回復

TOKAS本郷で企画「藪を暴く」関連で居原田さんと花崎さんのトーク&パフォーマンス。沖縄の状況を扱った企画意図や制作過程もさりながら、そうした問題を扱うに際しての表現における迷いや、パフォーマンスという形式がもちうる力など、現在形の論点が話し合…

AIは電気羊を想像するのか

少し前から、AIとアートの関係みたいのが報じられていて、そのつど検索するのが面倒なので、個人的に必読記事をまとめておきます。 まず最も重要と思われるのは、こちら。2016年に「レンブラント(画家の)の新作を、AIが作成した」というニュースがありまし…

アジアのノイズ・映像小特集

最近ずっと気になっているアジアのノイズについて、とりあえず映像にまとまっているものを並べてみます。数は多くないですが、ここから検索していくと広がりがありそうです 1 Jogja Noise Bombing Festival ジョグジャ・ノイズ・ボンビング すでに一部で話題…

アジア・ユーラシアMV小特集

アジア・ユーラシア地域のミュージックビデオを特集します。ポピュラー少なめ。解説もできないのが多いですが、面白いのもあると思うのでぜひお試しあれ。 1 Gabber Modus Operandi - Dosa Besar 大晦日に来日もしました。欧州はじめ世界ツアーをしている、…

私的MVベスト10 in 2010s

1. David Bowie - Lazarus 死や死後についての歌のアルバムを、発売直後の自らの死によって完成させた、人生に一度しか作れないコンセプト・アルバム。それはまた、「アルバム」というものが成立しえた2010年代半ばまでに可能なものであっただろう。そうした…

AMF2019

そういえば、AMF2019について書いていなかったので、メモ代わりに書いておきたいと思います。今年の7月初旬に東京で開催され、週末の二日間の公演に行きました。すでに数年間、アジアン・ミーティングを見てきていますが、アジアの演奏家たち、伝統楽器を使…

北京ノーウェーブ散策

前回のブログ記事のあと、斎藤聡さんの紹介で、火曜日に北京からの二人とお昼を一緒にしました。若干、北京のインディペンデント/アンダーグラウンドなシーンの話もしたので、メモ代わりに。 待ち合わせは神保町の「いもや」でした。11時半前で、行く気満…

Kaoru Abe No Future at l-e

11月8日金曜日、l-eにて、Kaoru Abe No Futureというバンドを見に行きました。北京から、ベースがザオ・コン(Zhao Cong)、ギターとドラムとボイスがズー・ウェンボー( Zhu Wenbo)、ギターとボーカルがリウリウ( Liuliu)の3人組です。 とはいえ、このう…