閉ざされたいくつもの部屋から

新型コロナウイルスで、欧州とアメリカの各都市がロックダウンされ、音楽家も外に出ることができなくなった。その中で、しかし、やみくもな創作意欲をもてあました音楽家たちは作品を作り続け、発表し続けている。とくに今は、この10年で発達した動画サイトを通じたライブストリーミングで、次々に表現が生まれている。

中でも記憶しておきたいのは、ライブ・コーディングのコミュニティが行ったイベントだ。ライブコーディングは、その場で指示(コード)を入力し、音楽を作っていくデジタル音楽の一つ。日本でもアルゴレイブと言うイベントが東京で頻繁に打たれていた。

そのライブコーディングの作家たちが、世界中から集まって作り上げたのが「Eulerroom Eqinox 2020」である。これはネット上のイベントで、なんと3月18日23時30分から3月23日午前0時30分まで、ぶっ通しでライブストリーミングを行うと言う企画だった。演奏家は、配信画面に直接にコード入力をしていくPCのモニタ画面を映し出し、そのコードに沿ってリズムとメロディが生で変化していくのを体感できるというわけだ。参加者は世界中からで、ホームページ上のスケジュールには膨大な数の演奏家が入れ替わり立ち替りつづけていくことが、時間軸にそってびっしりと書かれている。

ホームページはこちら→ http://equinox.eulerroom.com/schedule.html

 

また一部がユーチューブ上に残されているようだ。

 

 

もう一つは、米国の実験音楽の老舗レーベル、アーストワイルが立ち上げた「AMPLIFY2020」フェスティバルだ。アンプリファイ・フェスティバルは、2000年代に実際に行われていたもので、とりわけいわゆる音響的即興の演奏家たちが世界中から参加して注目を浴びた。

その上で、今年はそれをネット上で展開している。フェイスブックの公開グループを立ち上げ、そこで1投稿につき一人の新作を提示する、という形だ。とくに最近同レーベルが力を入れている、作曲作品を作るヴァンデルヴァイザー楽派の新作からハーバード大学で教鞭をとるサウンドアーティスト・ノイズミュージシャンのヴィクトリア・シェンなど、幅広く、どれも興味ふかいラインナップになっている。

 

部屋は閉ざされているが、彼らにとってはPCはそこに開いた窓のようであり、今も次々に新たなウィンドウが開かれては創作がつづけられている。