遠い音楽

こんにちは。たまには、最近つくっている音楽について、書いてみようと思ったので、書いています。前回の、ハンブルクを拠点にしたリモートコンサート企画「パジャマオペラ」から派生して、これまで4つほど作品の形をしたのがありますので、ちょっとまとめてみましょう。

まず最初は、3月に、その「パジャマオペラ」内で演奏されるためにつくった、「Tele-Call」です。この企画では、おのおの1曲1分の曲を提供するものでしたので、これも約1分ですね。曲の発想は、このときヴァイオリニストのドン・ゾーさんが、コロナ禍の状況について「ほしのこえ」(新海誠)をあげて論じていたとこから、来ています。「ほしのこえ」はSFアニメですが、交流のある一人が非常に遠い場所に行ってしまい、連絡をしても異様な時間がかかる。もう一人は、その交信を待っている、という状況が描かれます。コロナで、自粛を余儀なくされた、リモートにならざるをえなかった状況と重ねてそれを取り上げていました。そこから、モチーフは通信で、サインウェーブとピアノのためのトラックを作りました。

構成は、シンプルなサインウェーブのループに、真ん中で断絶があり、信号音がほんのわずか流れて消えていく、というもので、不安定な交信を表現しています。これに、激しいピアノの即興をお願いして。ピアノ即興は初めてだったそうですが、やってみたところ、思ったよりもこれは好評で、それで次作以降もできることになりました。こちら。

 

soundcloud.com

 

 

 

そこから、もっと発展させようということで、次に「Tele-Path」というのができました。これは4月ですね。同じく「パジャマオペラ」内で演奏されることを目的に作っています。もともとは「Tele-Message」というタイトルでしたが、改題されています。

こちらの曲想は、具体的な手がかりはなく、前作に引き続き、通信・交信のモチーフを出そうということだけ決めて、あとは好きに作ってあります。特に、一度やってみたかった持続音でのノイズ、というのを実際にやってみたところもあります。参照するために聞いたのは、ケージのナンバーピースと、ラディーグの器楽作品ですね。ヴァイオリンは、2つほど録音して、それをバラして一つにくっつけています。

それで、実際にリモートコンサートでも演奏したのですが(かなり爆音でやったので、耳を押さえている人もいました)、そのあと、これに動画をつけてみようということで、映像を持ってきて、編集してみました。交信ということで、「空」だろう、というわけで。空を一発撮りしてあります。ちなみに、これを編集している間に、通信や交信というテーマが自分の中で膨らんできて、哲学者マッシモ・カッチャーリが「我々はテクノロジーを使って天使のように交信しているが、天使ではないので実際は肉体に閉じ込められたままだ」というような現代都市のイメージ「天使都市」などがモチーフに浮上してきました。皮肉というか、逆説的なというか、そうした都市の姿で、これについては今も関心を持っています。

というわけで、「テレパス(交信)」と「遠い道」の両方を意味する「Tele-Path」はこちらです。

 

 

 

 

さらに。ここまで来たら、もうちょっとやろうということで、サインウェーブのトラックに、自由にヴァイオリンの即興をしたものも作りました。それが「Tele-Tone」です。ここではドンゾーさんのヴァイオリンが炸裂していて、初めてこういう即興をするんだと知ったところもあるのですが、特に終盤、弓を二本もって演奏するところは、低音と高音のうねりが二重になっていて、なかなかに強烈です。映像を編集してほしいということで、無理にカットアップして、けっこう独特な感じになったと思います。

 

 

 

そして。現時点で最新のものは、「Tele-Vision」。7月中旬に公開されました。これは、フィールドレコーディングのミックスに、ヴァイオリンの即興が合わさった、ミュージックコンクレートというべきか、サウンドスケープというべきか、そうした作品です。これまではノイズもやっていたわけですが、どうせなら他にも、ということで、フィールドレコーディングに取り組みました。海辺と鳥、足音をミックスして架空の風景を作り、それにヴァイオリンが即興で合わせています。映像も作ろうということで、こちらはどれもPC画面を撮影したものから構成して、バラバラの映像が架空の風景をつくるようにしてみました。最後は、文字も入れてみて。音では描かれていないですけど、空や太陽などが、聞いている人の脳内で展開すると面白いかなと思ってやってみています。ではどうぞ。

 

 

 

ということで、3月から7月までですね。最後の「tele-vision」は、トラック作りから音源作成、映像作成、と段階を踏んでいるので、少し間が空いていますが、これらは一連のものとして、ずっと作ってきています。通信・交信がテーマで、音楽的には持続がベース、ただし意外にいろいろなジャンルというか方法論を試していて、まあ、なるべくどこかは実験的な部分が含まれれば、と思っています。これらは、どれもリモートで、遠い場所で作られました。音が空気を震わせて体感する、といったものとは、かなり違うところで作られています。それがどういうものかは、もう少し試していきたいと思いますね。

はい、そんなところでした。続報あれば、またおしらせします。

 

 

ネットワーキング・プロジェクト「パジャマオペラ」

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パジャマオペラ、ライブストリーミングの様子。ここでは、設定(作曲)されたルール上で、即興演奏をおこなっている



ひさしぶりになりました。その間に、自粛期間とかあってですね、その期間のことを書こうかな、と。

最近は、ドイツ、ハンブルクの音楽家を中心に行われている、ネットワーキング・プロジェクト「パジャマオペラ」に参加して、もっぱらそこを軸に活動しています。急になんでハンブルクか、というのは、雑記などで後で記すとして。まずは、このプロジェクトを紹介してみましょう。

 

1 コロナ下のオープンソースとネットワーキング

この「パジャマオペラ」は、最近はじまったものです。最初の会合が3月下旬なので、準備はその少し前、3月中旬頃からはじまりました。背景は、もちろん自粛です。ドイツも3月から自粛期間にはいっていて、音楽家も誰もが家にいなければならなかった。そこで、始めたものですね。

特徴は、2点あります。一つは、オープンソース。つまり、このプロジェクトに関係する資料は、すべてネット上のファイルにアップされ、共有され、また誰もがアクセスできるように公開されています。たとえば、会合やパフォーマンスの映像や動画です。また、作曲家が多く参加していて、新作を寄せている場合はその楽譜やテキスト、グラフィカルスコア。あと、映像や音の断片などのファイルも、このプロジェクト内で加工やリミックスをする場合は、やはりファイル上で共有・公開されています。

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パジャマオペラの様子。共有した作品を、プログラムを組んだ上で上演していきます。

2点目は、ネットワーキング・プロジェクトであること。つまりリモートですね。遠隔で、インターネットをつうじて、リアルタイムのパフォーマンスをしたり、映像の放送をしたり。また、共有ファイルを使って、相互に編集加工して新作をつくることもあります。いずれにしても、自粛で家にいなければならない中で、遠隔作業で作品を作っていくことものになります。

こうした2点の特徴は、いうまでもなく、オンラインでのプロジェクトを進めていくさいの、ある種のルールとして設定されています。オープンソースというのも、まあ一般的な用語ですよね。ちなみにこのプロジェクトは、誰でも参加が可能で、新作を寄せることもできますし、パフォーマンスに参加することもできます。全体はスカイプのグループ内で運営されていて、主にそこで議論やプログラムが決められています。

誰もが参加でき、オンラインで交流できる。そうした、コロナ自粛下での創作活動のプロジェクトとして、「パジャマオペラ」は行われているわけです。

(↓寄せられたグラフィカルスコアを使って演奏された時の録音)

 

2 自粛とオペラ

ちなみに、細かいルールはほかにも幾つかあって。一つは、オンラインでのパフォーマンスの時は「パジャマ」ないし部屋着であること。自粛なので、まあしょうがない。タイトルもここから来ています。

あと、基本的に一つの作品は、1分間のものであるとしていて。寄せられた1分間の作品群を、オンライン上で一気にパフォーマンスしていく、という構成がとられます。とはいえ、次第に長い作品も出てきて、最近は集団での演奏なども出てきたので、これは必ずしも守られていません。まあ枠組みですね。

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プロジェクト主宰の一人、ドン・ゾーさん。ハンブルク在住の作曲家で、ヴァイオリン奏者でもあります

また、この全体を運営しているのは二人います。一人は、映画音楽などで活躍している、ティース・ミュンツァーさん。かなりロック寄りというか、ノイバウテン的な音楽性と世界観を持っていて、短い映像ながら、歌詞付きのMVなどをたちまち制作していまいます。このプロジェクトと並行で、ズームを使った集団即興パフォーマンスも現在やっています。

もう一人は、ハンブルクの作曲家のドン・ゾーさん。上海出身で、電子音楽とメディアパフォーマンスを用いた演劇・オペラ型の作品を制作・作曲しています。技術面ではミュンツァーさんが、内容面ではドン・ゾーさんがメインでこのプロジェクトは進んでいます。

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映画音楽などで活躍しているミュンツァーさん。他にも現在3つほどのオンラインプロジェクトを進めています。

なので、この二人の個性もあるのでしょうが、全体としてストーリーがあったり、ややハードめな表現を持つパフォーマンスになっていく傾向があります。ピアノからヴァイオリン、電子楽器までを操るドン・ゾーさんによる作品群の演奏なども、そうですね。そのあたりは、なかなか面白いです。

 

 

3 ハンブルク・現代音楽とその外

この二人を中心に、ハンブルクにいる胡弓奏者のウェンディ、カールスルーエZKMを経由してジャーナリストをしているフレンツ、微分音演奏を得意にするシーシャンなど、いろいろな参加者がいます。

ちなみに、このほとんどが、いわゆる現代音楽のコミュニティの人たちです。とくに、ハンブルクには「ハンブルク音楽演劇大学」という国立の大学があり、そこでのネットワークですね。リゲティが教鞭をとっていたことでも有名なところで、演劇と音楽と、両方を専門としているようです。とはいえ、関係者といっても世界中にいますし、また随時、各地から参加者が飛び込んできます。

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通称ジョゼッペが寄せたヴァイオリンのための作品「ヒステリア」。ドンゾーさんが演奏しました

ですので、寄せられる作品も、いわゆる五線譜のものから、テキスト・スコアや図形楽譜、映像楽譜など、20世紀に開発されたものが多数あります。パフォーマンスの内容も、ふつうに楽器を弾くものだけでなく、発話や仕草・身振り、アクションの指定、また食べたり飲んだりする行為なども含まれています。まさに現代音楽の現場の一端をかいま見るようなところですね。

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画家のアネット・ステンツェルが数年かけて制作中の作品「メモリー・マシーン」を、図形楽譜として寄せました。これは現在、複数人で継続的に音楽として演奏中

一方で、こうしたリモート演奏・パフォーマンスは、現代音楽の範疇では「ネットワーキング・ミュージック」というものの中に分類されていて、ソフトやアプリについての情報共有も、コミュニティ内では盛んです。しばしばスカイプやズームが強調されていますが、音だけのリモート演奏ならsoundjackが有用であるという話も、ここから聞きました。

一方で、即興演奏も行われています。特に、たんに音を共有するだけでなく、映像として互いを見ながら演奏するタイプのものですね。この辺りはなかなか試行錯誤していて、私も少し作品を寄せています。ハンブルクでは即興のシーンもあるそうで、また、主宰の二人もそうしたアカデミーの外にあるシーンにも積極的な関心を寄せています。作品の多彩さは、それにもよるところが大きいようです。

(ノイズにも寛容で、電子音楽などとの関連から理解も進んでいます。これは私も参加したノイズと器楽の作品)

 

 結びに ーオンラインのなかの楽譜

はい、こんな感じですね。今も、このように展開しています。むしろどんどんと色々な作品が増えてきて、なかなか面白いなと思います。自粛期間中、音楽家や作曲家たちの創作意欲がふくらんで、広がっていくようでもありますね。

それで、こうした広がりについて、このプロジェクトで重要だなと思うのは、その多彩さもさりながら、重要なのは最初にふれた「オープンソース」という点だと思います。つまり、その内容の広がりとして器楽演奏から電子楽器、図形楽譜、テキスト、即興、ノイズといったこともありますが、それらの自由な積みかさなりを可能にしているのは、オープンソース。つまり楽譜をアップロードして、いつでもアクセスできるようにする、ということです。現在、こうしたリモートによるプロジェクトはたくさんありますが、同時にオープンソースを掲げたものは、あまりないように思います。

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5月15日に行われたリモート公演での様子。ここではドンゾーさんが、これまでに蓄積された作品群を組み合わせた「ソロ・リミックス」を演奏した。

また、その時に、楽譜というものの重要性を、あらためて知ることになります。楽譜というのは、たとえ五線譜でなくとも、その中に作品の情報が集約されていて。それを読めばいつでも再演することができますし、また、アップされている楽譜群を見ればこのプロジェクト自体の性格というか、結構あれこれやろうとしているということも、パッとわかるでしょう。それに、多少の時間がかかっても、それらの楽譜をやってみようという人がのんびりと実行したりします。

わかりやすい比喩を使うと、このオープンソースの楽譜群は、まるでオンラインの海のなかの浮き島のようです。オンライン=インターネットは、様々な情報がいつも飛び交い、あちこちに飛んでいくような場所ですが、この楽譜群があるファイルは、その中で自己同一性を保たせたり、またそこに戻ってこれる(運が良ければお宝があるかもしれない)島のようなものではないでしょうか。そこがあるので、ふらっとやってきた人が思いついたように、また作品を置いていく。参加者全員がそれぞれ自身のコミュニティでの活動を持っていますが、この浮き島があれば、また戻ってくることができます。

これは、ちょっと奇妙な経験です。21世紀、デジタル時代で、楽譜の重要性に出会うということです。もちろん、かつてのような五線譜ではないかもしれません。けれど、そこに詰め込められた情報は、あらためてオンラインの海の中で、作品として演奏されることで解き放たれていくようです。もしかすれば、そのプロセスこそが「パジャマオペラ」のすべてなのかもしれません。

 

 

そんなことを、少し考えました。もちろんリモート演奏の面白さや、技術上の問題をどう取り込むかとか、そういうことを考えていくだけでも、十分に面白いですね。まだまだ途中経過ですので、随時更新していきたいと思います。

 

 

閉ざされたいくつもの部屋から

新型コロナウイルスで、欧州とアメリカの各都市がロックダウンされ、音楽家も外に出ることができなくなった。その中で、しかし、やみくもな創作意欲をもてあました音楽家たちは作品を作り続け、発表し続けている。とくに今は、この10年で発達した動画サイトを通じたライブストリーミングで、次々に表現が生まれている。

中でも記憶しておきたいのは、ライブ・コーディングのコミュニティが行ったイベントだ。ライブコーディングは、その場で指示(コード)を入力し、音楽を作っていくデジタル音楽の一つ。日本でもアルゴレイブと言うイベントが東京で頻繁に打たれていた。

そのライブコーディングの作家たちが、世界中から集まって作り上げたのが「Eulerroom Eqinox 2020」である。これはネット上のイベントで、なんと3月18日23時30分から3月23日午前0時30分まで、ぶっ通しでライブストリーミングを行うと言う企画だった。演奏家は、配信画面に直接にコード入力をしていくPCのモニタ画面を映し出し、そのコードに沿ってリズムとメロディが生で変化していくのを体感できるというわけだ。参加者は世界中からで、ホームページ上のスケジュールには膨大な数の演奏家が入れ替わり立ち替りつづけていくことが、時間軸にそってびっしりと書かれている。

ホームページはこちら→ http://equinox.eulerroom.com/schedule.html

 

また一部がユーチューブ上に残されているようだ。

 

 

もう一つは、米国の実験音楽の老舗レーベル、アーストワイルが立ち上げた「AMPLIFY2020」フェスティバルだ。アンプリファイ・フェスティバルは、2000年代に実際に行われていたもので、とりわけいわゆる音響的即興の演奏家たちが世界中から参加して注目を浴びた。

その上で、今年はそれをネット上で展開している。フェイスブックの公開グループを立ち上げ、そこで1投稿につき一人の新作を提示する、という形だ。とくに最近同レーベルが力を入れている、作曲作品を作るヴァンデルヴァイザー楽派の新作からハーバード大学で教鞭をとるサウンドアーティスト・ノイズミュージシャンのヴィクトリア・シェンなど、幅広く、どれも興味ふかいラインナップになっている。

 

部屋は閉ざされているが、彼らにとってはPCはそこに開いた窓のようであり、今も次々に新たなウィンドウが開かれては創作がつづけられている。 

 

 

躍動する東京の電子雑音2020

今回は、最近の日本のシーンで面白そうと思う映像を紹介してみたいと思います。まず、ちょっとだけ前提が必要なので、こちらをご覧ください

 

 

野本直輝さんという方のライブの映像ですが、これはライブ・コーディング(コードは、コンピュータでデータを表現するもの。それを直に打ち込んで、次にどういう音が鳴るかを書き込んでいきます。生のコンピュータ音楽というか)と、あとモジュラーシンセという楽器(それぞれ別々の会社が作っているモジュールを、ケーブルでつないで、音を出すようにしていくもの。規格は世界共通のがあって、ただモジュールは別々に集めて、それらをつないでいくわけです)と、その両方が映っています。

ちなみにライブコーディングは「アルゴレイブ」という企画があって、これは世界中でやっていますが、東京でも盛んに展開しています。主催のレニック・ベルさんも、東京に滞在されている、のでしょうか。ライブコーディングがメインのイベントです。で、野本さんは最近、この両方を組み合わせた演奏をしていて、即興なのか、打ち込みなのか、ノイズなのか、コンピュータ音楽なのか、まあ細かいことは置いておいて、面白い試みですよね。

で、さいきん面白いと思うのは、このライブコーディングやモジュラーシンセを使ったりしている音楽です。これらはあくまで楽器なので、実際にはいろいろな音楽ができるのですが、とくに速かったり、音が豊かであったり、リズムが特徴的であったり、これまでとは少し違う感触を持っています。また皆さん、世界中で活動している。東京2020年代の音の一つかなと、思っています。

まず野本さんのアルバム宣伝映像から。いきなり高速で電子雑音です。

 

 

次は、野本さんとも共演多数の、Kyosuke Teradaさん。バンドHUH(ハーと読みます)やシンセユニットを演っています。とにかく速い。速度加速度だけが体験されるようです。

まずハーから。ヒップホップのハハノシキュウさんとも共演していますがライブ動画。ものすごい速さのドラムとギター、爆裂絶叫の即興演奏をどうぞ。

 

 

ついで、シンセユニットThe Obey Unit。ライブを見ましたが、暴力的な音の多さで、そのままものすごい速度で動いていきます。ライブ動画。

 

 

同じ企画などにも参加しているところで、Yuko Arakiさん。ループの中に密かに変化が含まれていて、ノイズとともに刺激的な音を形作ります。新作はこちら。

 

 

あと、モジュラーシンセを使ったところで、viviankrist。日本を代表するグラインドコアバンド、ギャルハンマーの元ボーカルで、今はオスロ在住。シンセをメインにアルバムを、実験電子音楽で有名なコールドスプリングなどから出しています。初夏に来日して東京でライブがあるそうです。新作のリミックスアルバムから。

 

 

など。分厚いハーシュノイズの波、とは、またちょっと違う、すばやく、物量過密気味で、高速通信を追い抜こうというばかりに飛び交っていく電子雑音、そこが今おもしろいものの一つです。

 

ノイズあるいは聲音in台湾

台湾ノイズ動画を紹介したつづきで、もうちょっと行ってみましょう。台湾では「聲音」という単語を使うのですが、これでノイズからサウンドまで、かなり幅広い意味で用いられます。直訳すると音や声も意味するらしく、かなり幅広い。そして、その聲音の芸術として、ノイズからメディアアート、パフォーマンスまで含む実験的な試みが進められています。

ので、以下紹介。

 

まずは代表格、リンチーウェイさんのから。リンさんは軍政解放以後の90年代に台湾にノイズを持ち込んだ一人で(もう一人、ワンフーレイという人がいます)、今はこういった作品をやっています。

 

 

はい。タイトルは「テープ・ミュージック」。今年はパリのポンピドゥーセンターで毎週末にパフォーマンスとワークショップをやったそうです。活躍中。内容はご覧のようにテープもしくは布に文字が書いてあり、葬儀などの儀式で用いる単語を抜いてきているようです。それを楽譜代わりに、ぐるぐる回して読み上げていく。テープは、布の意味もありますが、形態がミニマルのライヒがやっていたテープミュージックにも似ているという何重かの意味があるのでしょう。なかなかカオスなパフォーマンス。

 

で、リンさんの90年代の映像として、Z.S.L.O.(ゼロ・サウンド・リベレーション・オーガニゼーション)があります。これはノイズプロジェクトで、もちろんノイジーですが、インダストリアルというか工業・技術などに焦点を当てたノイズからジャンク、バイオアートなどへの関心が伺えます。映像はほとんどありませんが、最初見たときたいそう驚き興奮してしまったこちらの断片をどうぞ。

 

 

このリンさんのもとで、パンクバンドをやっていたのがディノ。今は、もう長いことノー・インプット・ミキシングボード(ミキサーのインとアウトをつないでフィードバックノイズを出させてしまう、改造楽器。90年代末に中村としまるさんがはじめて、今では世界中で知られています)での演奏をしています。台北ノイズ第1世代、あるいは1.5世代と言われる演奏をどうぞ。

 

 

ディノさんは、今はアジアのフェスに引っ張りだこで、映像はまだ少ないですが、どれも素晴らしいようです。

 

 

最後に、台北を離れて、台南にある聽說という場所をご紹介。ここではアリス・チャンとナイジェル・ブラウンの二人が運営していて、一軒まるまる使います。レジデンシーからイベントまで、内容もワークショップからレクチャー、コンサートまで。ノイズから器楽、パフォーマンスまで幅広いです。映像では、djスニフさんとかシェリルチャンも出てきますね。ではどうぞ。

 

 

ということで、幅広い活動があります。関心は続く。要注目です。

雑音フロム台北

新型コロナウイルスのせいで、3月頭に行く予定だった台湾旅行を見送ることになってしまいました。残念。

だからというわけではありませんが、台湾のノイズ動画をいくつか紹介してみたいと思います。台北のノイズシーンは、日本や、これまで紹介してみたアジア各域と少し違う感触があって、そのへんもお楽しみください。

 

まずは失声祭(Lacking Sound Festival)から。失声祭は、台北のノイズ世代が立ち上げたイベントで、アートや音楽の人がごっちゃになって作品を繰り広げます。とりあえず、何度も来日もしているツ・ニの動画から。なかなかかっこいい、し、機材もオリジナルで製作されています。どうぞ

 

はい。機材は、光を読み取るセンサーに照明を当て、そのデータを音に変換するものである、と聞いたことがあります。やや不確かですが、そのようなことをしていそうな感じもありますね

 

次は、女性のノイズ、として、パフォーマンスも兼ねた作品作りをするベティアップルをご紹介。彼女が使う機材はバイブレーター、いわゆる性器に挿入するアレですが、それを山のように束ねて振動を音に変えます。思うに、このパフォーマンスに対して共感する女性は非常に多いのではないでしょうか。一方で音もノイズの部分もあり(特に20分前後から)またクラブの要素というか、クイアなドラァグクィーン的な性格も見せます。華やかにして攻撃的なパフォーマンスの動画をどうぞ

 

 

そのベティアップルの友人でもあり、かなりの評論や翻訳もしているのが、DJ味王です。ちなみに右側の女性で、左の男性は香港のナーヴ。このライブは「DJ魔法陣」と題して、複数のノイズミュージシャンが連続して何時間も演奏を続けるもので、味王がオーガナイズ。レーザーが床に魔法陣のマークを形作りながら続けられたそうです。面白そう。

 

 

最後に、酸屋という場所の動画を。ここは、映像も音楽もなんでもありの場所で、主に運営をしている二人が映っている人たち。荒々しく手作りですが、ハウリングエフェクターをかませて、初期衝動的な雑音で遊んでいます。こういう場所も、東京にはあまりないように思うので、ちょっと紹介してみましょう。

 

 

ということで、台北から、いくつか動画でした。機材がオリジナルで、アートというかメディアアートの手法で作られていたり、あと、まあ女性が多いですね。台湾で、ノイズはまったく別の形に生まれ変わっているようでもあります。要注目。

 

 

亜熱帯でノイズ(ノイズ・フロム・インドネシア)

亜熱帯、東南アジアから、この数年、話題のノイズが相次いでいます。インドネシアで盛んなメタルから発展した、うるさい、やばい、こわい、てんこ盛りのノイズの世界が広がっています。個人的にも楽しんでいるところなので、ちょっと紹介してみましょう。

まずは、ドうるさいハーシュノイズから。ソダドサことクリスティナ・ウディアタマ。ジョグジャ・ノイズ・ボミング創設者の一人で、凶悪な演奏です

 

 

次は、インドラ・マヌス。すでにヨーロッパでツアーをしたりキュレーションをしたり、あとノイズを論じた著書もある、理論派ですがウルサいです

 

 

ではジョグジャ・ノイズ・ボミング。最初はメタラーが(インドネシアはメタルが盛んだそうです)勢いにまかせて、公園に集まって機材をブースカやっていたところからスタートしたと言われています。今も毎年フェスをやっていて、やっぱり路上でドギャーとやったりするらしく、初期衝動は失っていません。ここでは有名な、暴走バイクとの共演をどうぞ

 

最近イチオシなのがこの人です。読み方はわかりませんが、とにかく切れ味スピード破壊力、どれもすごいし、あと音源になると突然なぞの言語による超古代文明の遺物らしいタイトルがついていたりして、想像力もすごい。バリ島を中心に、ツアーやオーガナイズもやっているそうです(本当にイチオシなので、音源をたくさん買ってしまいました笑)。めちゃめちゃ切れ味のある去年のボミング・フェスの映像からどうぞ〜

 

最後に少し変化球を。二つ目に紹介したインドラ・マヌスは、いろいろなジャンルの演奏家たちと共演しています。とくにおもしろいなと思ったのはラップとのユニット。これで昨年は欧州ツアーをしたそうです。こちら

 

とりあえず、この辺りです。インドネシアでは、ジョグジャカルタでノイズが盛んで、とくにジョグジャ・ノイズ・ボミングは、適当にみんなで機材で遊んでいたところが始まりということで、機材を共有していて。誰でも好きに使ってノイズを演奏してみてくれ、みたいな感じでやっているらしいです。それで、次々に面白いのが出てくる。そんなところですかね