2018、台北、夏(続々)

3日目。とりあえず昼近くまで寝ていた。昨夜おそくまでフェイスブックでやりとりしていたせいもあるが、なにしろ豪雨でずぶ濡れになったときの疲労が蓄積している。そういえば、2日目は228公園にいったあと、書家ツァイ(lolololで知り合った)のオフィスに行く予定だったが、豪雨で配水管が壊れてしまい、その対応に追われていると彼女から連絡があって予定を取りやめにしたりした。本当に歴史的な豪雨だったようだ。一方で、深夜のフェイスブックにはイベントの打ち上げ写真がアップされてきていて、lolololも混じっていたりして、よかったと思う。

 

というわけで10時ほどに起床して、買いだめしておいたコンビニの冷麺をたべ、お茶を飲む。メッセンジャーでは、おすすめの美術館情報などが送られてきて、あれこれ検討したが、どうも少し距離があるところが多く、しぶってしまった。

結局、トレジャーヒルからすぐ近くの、台湾大学を散策することにする。正門まえには南国の樹木が植えられ、広い通りが校内をぶち抜いている。暑い中をとりあえずぶらぶら。新しい校舎などを眺め、建築がすばらしいことにため息。歩いていると小雨が降り始め、ファーストフードに寄ったのち昼寝した。

 

夕方に起床すると、lolololから夜に会食しようというメッセージ。地下鉄忠孝新生ちかくのカフェでということになった。外へ出て、公館をぶらぶら。3日目になるとだいぶ慣れる。歩いていると、急に日が差してきて、それまでの嵐が嘘のように快晴に。おまけに巨大な虹が空を左右に貫いていた。(これはもしや大友さんが離陸したのでは笑)と思いながら、写真を撮る。台北にいたフィオナリーもフェイスブックに虹の写真をアップしていた。

乗り換えに必要なので、また中山堂がある西門で電車を降りて、食事でもする。昨日みた原宿と渋谷が合体した繁華街のはしっこで、牛肉麺をたべた。もしかすると、これが台湾らしい料理の初かもしれない。薄味でおいしい。

19時ごろ、忠孝新生にいく。行くと、まるで恵比寿のような街並みがあらわれ、なかなか驚いた。公館は大宮ぽいし大学は南国だし、西門は原宿で、ここは恵比寿である。ほんとうに恵比寿みたいで、うっかりすると日本語を話してしまいそうだった。「ここは台北」と何度も頭の中でくりかえした(本当に)。

 

道路で煙草を吸っていると、lolololが登場。カフェに行った。まるで恵比寿。コーヒーを注文。lolololステッカーをもらう。

それから話したトピックは多岐にわたる。台湾のアーティストの多さ、日本の評論の多さ、デジタルアートについて、サウンドアートについて、日本の即興、音響派について、中国の現代哲学について、身体について、数学モデルについて、などなど。シェリルさんとはだいぶ長く連絡をしていたので、一通りの興味はわかっていたつもりだったが(ひと月ほど前にロンドンでレジデンスをしていたとき、インタビューの内容やワークショップの進展などについても聞いていて、フランスの哲学者マラブーまでをふくむ関心も知っていた、僕はむしろ勉強する側だった)、シャ・リンについてはあまり知らなかった。聞いていると、lolololの全体のコンセプトは彼女が立てているようで、それも実際にある時期から、ローカルな文化に目を移し、公園で太極拳を学びながら地域文化を考察しているのだという。一方でテクノロジカルなモデルにも関心があるといい、膝を打つ思いだった。気が付くと、翌朝の練習を見に行くという話までになっていた。

 

翌朝、国父記念館へいく。ここは孫文を祀っている記念館で、広い公園になっている。そのあちこちで、朝の拳法の練習がおこなわれていた。見てみると、想像した以上に動きが速く、シャープである。

終わった後、レストランへ行き、オムレツをたべた。これも台湾ならではで、おいしい。たべながら、シェリルさんが芸能山城組が好きだということ、シャが寺山が好きだということ、などを聞く。それについて、帰国したら関連動画のリンクを送るよ、という話をして、また会おうねと、拳と拳をあわせて挨拶してから別れた。もう、ここがどこだか、よくわからない。

 

あとは順調に帰国。空港で、なぜかパリにいるリン・チーウェイから「台湾はどうだ、暑いか」というメッセージがきて、「まあまあかな」「蚊がいっぱいるだろ、蚊がたいへんだ」という会話をする。

空港でまた牛肉麺をたべて、飛行機に乗った。